正しい放射線の知識
放射線についての正しい知識の普及を目的とした動画のご紹介と、
生殖腺防護シールドに関するよくある質問についてご案内いたします。
正しい放射線の知識
動画の作成にあたり
このたび(公社)日本診療放射線技師会では放射線についての正しい知識の普及につながることを願って動画を作成しました。
放射線に関する知識が少しでも深まり、興味を持っていただくことで正しい知識が多くの方に知っていただけることを願っています。
我々の日常生活、科学技術の発達に役に立つ放射線と、医療の分野で放射線を扱う診療放射線技師の職業について多くの方に身近に感じていただければ幸いです。
(公社)日本診療放射線技師会
会長 上田 克彦
放射線に関する動画に寄せて
文部科学省では、福島第一原子力発電所の事故後の状況を踏まえ、児童生徒等が放射線に関する科学的な知識を身に付け、理解を深めることができるよう、放射線に関する教育を推進しています。
この度、医療の分野で放射線を扱う専門家である診療放射線技師の団体、(公社)⽇本診療放射線技師会が児童生徒向けに作成された動画は、児童生徒が放射線について科学的に理解するとともに、放射線の利用について正しく理解することに大変役立つものであり、心から感謝を申し上げます。
この動画が、児童生徒のみなさんにとって、放射線に関する学習の助けになることを願っています。
文部科学省初等中等教育局教育課程課
課長 武藤 久慶
生殖腺防護シールドに関するよくある質問(FAQ)集
放射線技術学会放射線防護部会
小児股関節撮影における生殖腺防護検討班
2023年11月8日
患者を対象としたFAQ
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A1. 放射線検査での生殖腺防護は70年以上前から実施されていますが、これは当時、生殖腺が放射線に被ばくすると精巣や卵巣などの生殖細胞に損傷を与え、将来の子孫に遺伝的影響が発生すると考えられていたためです。
しかしその後の放射線影響に関する疫学調査や最新の原爆被爆者追跡調査で放射線の人体影響についての理解が進み、精巣や卵巣などの放射線感受性はこれまで考えられていたよりも低いことがわかりました。また生殖腺の被ばくによってヒトの遺伝性疾患の発生頻度が増加したという明確な証拠も得られていません。そのため国際放射線防護委員会は新しい勧告を出すたびに、全ての人の集団に対する生殖腺の遺伝的影響に関する影響の指標を引き下げています。
X線装置の進歩により、昔の装置に比べて撮影に要する線量は飛躍的に少なくなり、1896年から2018年の間で撮影線量は約1/400に減少しました。またほとんどのX線装置に撮影部位に応じ、必要最小限の線量に自動調整する機能が搭載されています。そのため生殖腺防護シールドが撮影部位に重なると、生殖腺防護シールドによって見たい部分が隠れてしまい正確な診断できない可能性や、線量自動調整機能に影響して逆に線量を増加させてしまう可能性があり、患者さんにとっても有益ではありません。
このようなことから、私たちは遺伝的影響のリスク低減を目的とした生殖腺防護シールドの使用を撤廃する運びとなりました。 -
A2. 私たちは日常生活を送る中で自然環境から1年間に約2.1ミリシーベルトの放射線被ばくを受けています。それに対して通常のX線撮影で使用されている放射線量は0.06ミリシーベルトと自然環境から受ける放射線に比べても非常に少ない量であり、被ばくによるリスクは無いか、あっても無視できるくらい小さいです。そのため生殖腺防護シールドによる防護効果も同じように無いか、無視できるくらい小さいです。
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A3. 生殖腺が撮影部位から離れている場合、生殖腺防護シールドを使用するメリットはありません。撮影部位が生殖腺に近い場合、生殖腺防護シールドによって病変のある部分を覆い隠してしまう可能性があります。このような場合にはX線撮影の撮り直しが必要になったり、病気の発見が遅れてしまったりすることがあるかもしれません。
なお生殖腺防護シールドが撮影に影響を与えないと判断される場合に限り、生殖腺防護シールドを使用するかを患者に選択してもらうことを推奨します。 -
A4. 1950年代以降、人々は放射線が生殖細胞に損傷を与える可能性があり、この損傷が将来の子供たちに受け継がれるのではないかと心配していました。しかし、これは何世代にもわたって調べた放射線の人体影響に関する疫学調査や最新の原爆被爆者追跡調査の結果から、ヒトで放射線被ばくにより遺伝性疾患の発生頻度が、被ばくしなくても自然発生する確率である3%を上回って増加したという明確な根拠は得られず、放射線検査による生殖腺の被ばくリスクは実は小さすぎて判断できないか、ゼロでさえある可能性がわかりました。
このことは放射線検査で使用されるよりも、はるかに大量の放射線を受けた人々にも当てはまります。 -
A5. 通常の放射線検査で使用する線量は近年技術開発とともにどんどん低くなっており、赤ちゃんへの影響はないか、あっても無視できるくらい小さくなっています。そのため、胎児防護シールドを使用するメリットよりも、赤ちゃんを防護するためにお腹においた胎児防護シールドが画像に映り込むことで検査の質を低下させたり、場合によっては、検査全体の線量を増加させたりするなどのリスクが大きくなるため、胎児防護シールドを使用することは推奨されなくなっています。
ただし赤ちゃんの被ばくに対する患者さんの心理的不安は、胎児防護シールドを使用することによるリスクよりも大きくなる可能性があります。患者さんが胎児防護シールドの使用を希望する場合には、画質を損なわないよう注意を払って全体の線量が増加しないのであれば、主治医と撮影担当技師が相談した上で胎児防護シールドを使用することも可能です。 -
A6. 画像検査中に生殖腺防護シールドを使用することはお勧めしません。生殖腺防護シールドは主治医の観察が必要な部位を覆い隠してしまうため、防護シールドを使用できない検査もあります。ただしどうしても防護シールドを使用したい場合には、実施している検査に影響なく使用できる場合はご希望を尊重します。
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A7. 多くの動物実験の報告によると、不妊については増殖している精原細胞の放射線感受性が最も高いことがわかっています。精原幹細胞は思春期前に相当発育・成熟するため、思春期前の精巣の放射線感受性が高いことを示しています。
また卵巣内の始原卵胞の数は年齢とともに減少し、卵巣が受ける線量に依存して、早発卵巣不全を起こす時期が早くなります。子供の年齢が低いほど卵母細胞プールが大きく、放射線治療による早発閉経の時期が遅くなります。卵母細胞の数は加齢とともに減少するため、女性の不妊症を引き起こすのに必要な放射線量は、高齢になるほど低下します。 -
A8. 現在、医療機関で実施されている放射線検査において、胎児に0.1グレイ(100ミリグレイ)を超える被ばくを与える可能性のある検査はありません。医師は放射線検査を行うメリットが被ばくによるリスクよりもはるかに高いと判断できる場合に限って検査を行いますので、放射線検査を受けていただいて問題ありません。
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A9. 放射線被ばくによる胎児奇形はしきい線量(この線量を超えなければ影響が起こらない線量)が存在する組織反応であり、胎児がしきい線量を超える被ばくを受けなければ発生しません。
胎児奇形のしきい線量は100ミリグレイであり、現在、医療機関で実施されている放射線検査では、胎児に100ミリグレイを超える被ばくを与える可能性のある検査はありません。医師は放射線検査を行うメリットが被ばくによるリスクよりもはるかに高いと判断できる場合に限って検査を行いますので、放射線検査を受けていただいて問題ありません。